「サステイナブルライフを求めて」           kokoのサステイナブルライフレポート #2 パリ

化石燃料を使わない交通機関が拡充
2050年までにCo2排出ゼロ都市目指す

パリでは大抵、目の前にルーブル美術館を望むルーブル一丁目の友人宅に滞在する。最高の地の利だが、近年は観光客の波が押し寄せる。それを狙って、スリや浮浪者も集まってくる。寂しいのは近所の民家が次々と民泊にとって変わり、日常生活の味わいが薄れつつあることだ。近所を散歩しても観光ツアーに参加しているような気分になってしまう。

ルーヴル一丁目のテラスからルーヴル美術館を望む

ルーブル美術館北側にセーヌ川と並行して伸びる、リヴォリ通り。ナポレオンが建設し、パリの目貫通りとして栄えてきた。常に渋滞していたが、今では車道がほとんど無くなっていた。代わって中央に広い自転車レーン。その両脇にバスやタクシー、業務車両専用のレーンが申しわけたようについていた。

週末のリヴォリ通りは自転車もまばら

駐車スペースは、レンタル・バイク(市内に2万台)の駐輪場に。通りのデパート、プランタンには中古品を再生したコーナーができていた。飲食店はオーガニックを謳い、地元の食材を中心に扱う店が増えた。通りのレストランで食べたキノコのパイは、空いた地下駐車場で栽培されたものだとか。パリ市民の6割が車を所有しなくなった分、7万台分の車が減ったからだ。

誰でも使えるレンタル・バイクが通りにずらりと並ぶ
プランタンのリサイクル用品売り場もお洒落な佇まい

スーパーでは食品ロス対策として、割安なコーナーを設けている。フランスでは食品廃棄を5割削減する目標を掲げ、「食品破棄禁止法」を施行、ミシュラン・ガイドでは赤い星認証だけでなく、サステナブルな取り組みに緑のクローバー認証が与えられるようになった。

自転車や地下鉄、鉄道
見直される昔からの移動手段

 朝の通勤時間、リヴォリ通りは自転車がひしめく。雨の日も前後に子供を乗せて走る逞しい親たち。旅行者に向けては、市内に幾つものサイクリング観光ルートが設けられている。市内だけでなく、郊外、そして地方へと延びる長距離のサイクリングルートの整備が進む。現在全長2万km弱、2030年には欧州横断サイクルリングルートが計画されている。 

体力を要する自転車に代わって、勧められたのが、電動自転車の後ろに二人乗りの席を設けたタクシーだ。タクシーよりも3割以上安く、自転車レーンを走れるため渋滞がない。保険、WIFIも完備、観光客もパリの路地風景を臨場感たっぷりに楽しめる。石畳が多いので、少々お尻が痛くもなるが・・・

電気自転車のタクシー。カバーがあるので雨の日もOK

 地下鉄網の拡充も進む。16路線を有する地下鉄は全長200km、新たな4路線68駅を加えたパリ周辺の完全自動化地下鉄システムが、2030年をめどに完成する。総工費480億USD,その沿線開発を含めるとヨーロッパ最大のインフラ計画だ。

これにより、毎日200万人の乗客がより早く快適に安価でパリ圏を移動ようになり、2050年までには1400万tのCo2削減に貢献できるという。

 地下鉄に加え、現在大きな変革を遂げているのが鉄道網の拡充だ。フランスでは2021年に気候変動法案によって、短距離航空路線を停止。代わる鉄道移動によるCo2削減と経済性を見直し、夜行列車が国家予算1億€を投下して再整備された。寝台車は刷新され、WIFIや個別コンセントなどを設置。運賃もぐっと割安に抑えられている。

パリの北駅、どことなくノスタルジックな雰囲気が
2等寝台車もアメニティが揃い快適だ

変わりゆくセーヌ河畔の生活
パリジャンはどこへ

市中心部をゆるやかに蛇行しながら流れ、パリの風光を際立たせるセーヌ河、ナポレオンが市内に下水道を導入したものの、20世紀には汚染が進んだ。が、水質は30年かけて大きく改善され、今では30種以上の魚が生息するようになった(パリ漁業組合が存在する!)
河畔には緑が増え、散歩道や広場が設けられ市民の憩いの場に。もともとパリ発祥の地はセーヌ川の中州、シテ島であった。このため、ルーブル博物館はもちろん、観光名所の多くがセーヌ川沿いに数多く点在し、川の一部はユネスコ世界遺産に登録されている。
観光客にはセーヌ川の遊覧は常に人気で、平底船や小型ボートが数多く運航している。近年はソーラ・パワーや電気ボートが増えた。ふらりと小一時間のクルーズに乗り、川辺のパリ観光へ。ハイライトはノートルダム寺院が聳えるシテ島だ。ユリウス・カエザルのガリア戦記では、既に紀元前にこの島には住民がいた。

セーヌ河シテ島、ノートルダム寺院が鎮座する 🄫ATOUTFRANCE

だが、今では高級ホテルと民泊ばかりで住民はいなくなったという。家主は一泊数万円で貸出せば、その上りだけで郊外でのんびり暮らせる。交通網も充実しているので用事があれば簡単にパリに来られる。観光客だらけで、観光客価格になった地区で生活したくないのも最も。

かつてフランスを征服したカエサルは、そして、ナポレオンは、肌の色も雑多な観光客に占拠された、今日のシテ島を想像できるだろうか。

>シリーズ企画:「サステイナブルライフを求めて」

<著者プロフィール>
篠田香子 しのだこうこ
フリーランス・ジャーナリスト、東京とミラノを2拠点に、都市・不動産開発、ツーリズム、サステナブルライフ関連をレポート。


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