年齢性別も超える ペンギンが作り出す愛好者の輪

 2025年2月9日、10日、東京・世田谷区も東京農業大学百周年記念講堂で「第32回ペンギン会議全国大会」が開催された。昨年末にeepfBOOKS「ペンギン検定基本問題集2025」を刊行したペンギン研究者・上田一生さんは、同会議の研究員でもある。

 コロナ禍をはさんで5年ぶりのリアル開催とのことで、全国から集結した400人近いペンギンファン、研究者で広い会場は熱気に包まれた。
 同会議は、基本的に動物園・水族館等で飼育関連の業務に関わる人たちの情報交換の場として運営されているが、1日めのこの日は一般のペンギンファンにも開かれた交流イベントになっている。小学生から大人まで幅広い世代の参加者が、ペンギン人気の裾野の広さを表している。

 最初の基調講演は、足寄(あしょろ)動物化石博物館の方が登壇。ニュージーランドで見つかった新種の化石ペンギン「パクディプテス」から、ナゾに満ちたペンギン進化のヒミツを解き明かす。続いてペンギン研究者・上田一生さんの「ケープペンギン野生個体に関する最近の動向と隠れたリスクについて」と題したレクチャー。保全活動とレッドリスト指定を取り巻く現場で進行中の、最新の危機について解説してくれた。

 かなり専門的な講義が続いたあとは、小学生の研究発表。東京の小学校に通う生徒が、新江ノ島水族館の「ペンギン骨格標本作製体験」に参加した体験を発表してくれた。小学生ながら、解剖から骨洗浄、組立てまでの全工程を自ら体験した感想をまとめてくれた。
続いて埼玉県の女子小学生が、近くの公園にあるペンギン飼育施設の6羽のペンギンの日常をつづった「ペンギンビーチ通信」を自主制作し、それが壁新聞として広く来訪者への情報提供ツールにまで発展している話をきいた。

 みな一様に興味深い面持ちで子どもたちの話に耳を傾け、質疑応答も活発だ。飼育施設に訪れる入園者の生の声を直接聞けるのも、関係者には貴重な場になっているのがよくわかった。
 大人の目線で知識を押し付けるのではなく、大人も子どもも等しく同じ情報に触れ、適宜大人が子どもの理解を手助けする・・・本当の環境教育とはこういうものかもしれないと強く感じた。

 翌日、ペンギン会議で紹介されていたペンギン施設に行ってみた。あいにく鳥インフルエンザ予防のためペンギンたちは室内だけの飼育環境だったが、コミュニティメディア「ペンギンビーチ通信」は見ることができた。壁新聞となったことで近隣の住民たちにも地球環境のことを考えるきっかけづくりとなっているようだ。
 可愛らしいペンギンを通して、サスティナブルな啓発メディアが生まれ、環境保全の輪が地域の中に広がっていく。その主役が小さな子どもたち。このよう流れが今後ますます加速していくことを強く願う。

eepf:大野 彰